学ぶのか?」現代思想 *(Gendai Shisō)* vol. 39-7: 202-211.

本論文はナオミ・クラインの「災害資本主義」という概念に依拠しつつ、3.11の復興に付随する「大規模な社会的再編」について歴史的脈絡に即して分析した論考である。筆者によると、1995年に発生した阪神淡路大震災で破壊された神戸の街は、「復興」の名目のもとで組織的に公共事業などによって再び破壊され、震災の後に起きた自然と災害をめぐる科学論争も経済と行政権力の論理によって蹂躙された。筆者は、このような大災害を契機とした「組織的収奪」を促進する「災害資本主義」が3.11後の日本でも発動され、「総力戦体制の構築が行われる」と警鐘を鳴らしている。

また、科学史的見地から3.11を鑑みると、今回の原発事故は「技術的帝国主義の役割分担であり、軍事技術をアメリカに、代替えである発電の技術を日本が担うかたちのポスト・スリーマイル体制の制度疲労が露呈したもの」であると同時に、「明治から続く十九世紀的な帝国主義システムにおける科学技術体制の問題点の噴出」であるという(207頁)。これらの歴史的経験を踏まえた復興の科学的思想の枠組みとして、筆者は専門家が決定的な権威を持つ従来の「ノーマル・サイエンス」を超えた民主知に基づいた「ポスト・ノーマル・サイエンス」という概念を提示している。

本論文は、科学史的観点から3.11を理解するうえで役立つ文献であるとともに、神戸の復興などの教訓から3.11からの復興のあり方について考えるうえでの一つの見地を提示している。近代以降の歴史的知識を要するので、大学生(もしくは大学院生)以上の教材として適切であろう。

– Yasuhito Abe

ARTICLE: 災害資本主義の発動 二度破壊された神戸から何を学ぶのか?
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