Editors’ Note: This is a Japanese translation of a Teach 3.11 annotation. We invite volunteers to translate and/or contribute content in Korean, Japanese, and Chinese languages. Thank you.
『ノーマル・アクシデント:高危険度技術とともに生きる』
この組織社会学の古典は、「災害研究(Disaster Studies)」とよばれるジャンルの基礎を提供する役割も果たしている。また本書は、その専門分野や研究対象とする時代にかかわらず、技術をめぐる事故や災害を研究する者にとって重要な知見をもたらすものでもある。とくに、緊密に結びつき、複雑に相互反応する複数のシステムにおいて起きる「システム事故」に関するペローの主張は、福島原発における過去のいわゆる些細な事故と目下の破滅的な事故がどのように関わりあっているのかを理解する助けとなるだろう。例えば、ペローは、相互に無関係なはずのシステムの構成要素が、単にそれらが物理的に近くにあるという理由で引き起こす厄介な相互反応について紹介している(それは、使用済み燃料のプールが、汚染物質が含まれる格納容器(GEMark 1)と同じ建物の上の階にあるというような事態のことである)。さらに、情報の不透明さが事故において決定的な役割を果たしてしまうというケースも取り上げられている(例えば、使いものにならないセンサーやアクセス不能な部分が生じることで、システム全体やその部分の現状を知ることが不可能になるという状況である)。本書の第一章と第二章には、実際に起きた原発事故、とくにスリーマイル島の事故についての詳細な記述があり、1999年に出版された改訂版には著者本人による新しい後記が含まれている。
– Akiko Ishii